扉を開けたら、大きな荷物たちが廊下一帯に溢れかえっていた。
隣に人が越してきたことを生活している気配で感じながら、このアパートもようやく全室埋まったのだと思っていた。
しかし、今朝、玄関開けたら共有スペースの廊下にたくさんの荷物。
少し驚きながら歩みを進めると
隣の隣の部屋のドアが大きく開いていて、部屋の家主であろう人と目が合った。
どうやらここの家主が引っ越すらしい。
「こんにちは」
初めて交わした挨拶は、同時に別れの言葉になる。
外に出ると道端一面に広がる花びら。
桜の開花宣言にはまだ早いのに、
気温の寒暖差で早起きした桜たちが
まるで家主の門出を祝うかのように
青空の下、高く高く舞い上がっていった。
これから先の光の訪れを。
その祈りは生きるすべてに
平等に在ることを願う。